環境社会課題のオープンチームサイエンスにおける情報非対称性の軽減

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何がどこまでわかったか

プロジェクトメンバーが琵琶湖の水草繁茂問題に対処する実践研究などの事例を持ち寄り、事例の観察に基づいて短い周期で仮説を改良していく「仮説検証ころがし」を通して、ひらかれた協働研究の方法論を「オープンチームサイエンス・メソッド」にまとめました。これは、公的資金による研究の成果を広く社会に開放する「オープンサイエンス」の概念を学術研究の知識生産システムの開放へと拡張した上で、分野間ないし学術と社会の〈へだたり〉を超えてつながるという超学際研究の要点と概念的に結合し、さらに市民が課題解決を主導する「シビックテック」の思想を取り入れて組み立てた作業仮説です。メソッドの実践を通して、当事者と研究者の間の「倫理的衡平性」と「研究プロセスの透明性」を担保することと、「対話と共話」を通じて問題を共有するために「視点の転換」によって〈とりつくしま〉を見出すことが重要だという考えに至り、これを自己点検項目に整理しました(表1)。

表1:オープンチームサイエンス・メソッドの自己点検項目

表1:オープンチームサイエンス・メソッドの自己点検項目

私たちの考える地球環境学

環境問題は、人間社会と自然環境の相互作用が機能不全に陥り、社会が解決するべき課題として現れたものです。一筋縄では解決できない「厄介な問題」となることもあります。「オープンチームサイエンス・メソッド」は、そのような解決困難な問題に立場を超えて立ち向かうための方法論です。この先、所内外のプロジェクトがこの方法論を活用し、さらに改良していくことにより、総合地球環境学の学術規範として定着していくことでしょう。

新たなつながり

プロジェクトの成果をまとめた一般向け書籍『環境問題を解く ひらかれた協働研究のすすめ』(近藤康久・大西秀之編、かもがわ出版、2021年)を刊行しました。また、日本学術会議の機関誌『学術の動向』2021年2月号にオープンチームサイエンスに関する論説記事を掲載したほか、日本経済新聞と京都新聞にオピニオン記事を寄稿しました。国際的にも、オープンチームサイエンス・メソッドとその実践に関する英語論文を出版し、超学際研究に関する国際的なブログサイトi2insights.orgにも紹介されました。プロジェクト終了後は、科研費等による研究活動を通じて、オープンチームサイエンス・メソッドの改良と普及を図っていきます。

プロジェクトリーダー

氏名所属
近藤 康久総合地球環境学研究所准教授

環境と社会に関わる複合的問題に、学際研究では分野の異なる研究者、超学際研究では政府・企業・NPO・住民など社会の多様な主体とチームを組んで対処しようとするとき、認識や思惑がずれていて、協働がうまくいかないことがあります。オープンチームサイエンスプロジェクトでは、そのような「ずれ」を乗り越えるための「ひらかれた協働研究」の方法論を探究しました。

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