地球研のプロジェクトでは、安定同位体を用いた研究がたくさんおこなわれてきました。物質や生物に含まれる元素の安定同位体比は、環境基準物質のような「基準値」はありませんが、環境中に存在する物質のつながりを示すことができる「トレーサブル(追跡可能)」な指標として高い機能をもっています。しかし、安定同位体がもつトレーサブルな情報は、それ自体に有害性がないため環境モニタリング項目に採用されておらず、社会的認知度もありません。一方、さまざまな元素濃度や安定同位体比を用いることで、ある物質の産地や発生源、それが生まれるプロセスが明らかになると期待され、環境診断の精度向上や学際研究のツールとして高い可能性があります。
個別学問領域で用いられてきた「同位体手法」を、学際的な地球環境学の枠組みで利用するにはどうすればよいのか、さらに社会と連携する超学際的アプローチでは安定同位体情報をどのように活用することができるかということを考えます。