荘林 幹太郎

荘林 幹太郎Mikitaro Shobayashi

土地利用の根源的革新による地球環境問題解決に向けた知の集約プログラム

担当

役職/肩書

総合地球環境学研究所特任教授

専門分野

農業環境・資源政策、農産物貿易と環境、農業政策

経歴

東京大学大学院農学系研究科修士課程およびジョンズ・ホプキンス大学地理環境工学科修士課程修了。東京大学博士(農学)。1982年より、農林水産省、世界銀行、OECD(経済協力開発機構)、滋賀県庁などにおいて農業政策、農業環境・水資源政策、貿易と環境などに係る政策立案等に従事。2007年より学習院女子大学国際文化交流学部教授、2017年より同大学副学長。2023年4月より現職。主な著書に『日本の農業環境政策』『農業直接支払いの概念と政策設計』等。

Q&A

地球研ではどんな研究をしていますか?
これまでのキャリアを通じて、農業と環境や土地・水資源の関係性を改善するための政策のあり方について研究を行ってきました。当初は政策実務家として、世界銀行では、地下水をめぐる「コモンズの悲劇」(過剰揚水による塩害化)を引きおこさないような方法で水資源を利用するための政策や制度のあり方を考えていました。また、OECDでは農業の有する「多面的機能」(農業は食料生産だけではなく洪水防止機能や生物多様性・景観保全機能などの社会的をもたらします。それらの機能をこのように呼称します)を理由とした国内農業保護政策が、自由貿易政策と整合的に構想されうるかについての政策議論を担当しました。さらに、滋賀県庁に出向中は我が国で初めての農業からの農薬・肥料の公共水域への流出を減じるための環境支払い政策や、我が国において数少ない生態系サービス支払の一つである「魚のゆりかご水田プロジェクト」の創設に深く係わりました。大学に転じて以降も、温室効果ガス排出権取引への農業部門の導入、集合的な環境支払いオークション制度に関する社会実験、革新的な農業環境政策を生み出すための研究者と政策立案者による「認識共同体」の役割に関する国際比較、集合的な土地利用調整メカニズムに関する革新的事例分析など、常に農業と環境の関係性の改善に向けた実際の政策へのインパクトを意識した研究活動を行ってきました。土地利用革新に関するプログラムもその延長線上にあります。
地球研で研究したい人に向けてのメッセージは?
地球環境問題の緩和とそれへの適応に残された時間は多くありません。そのために地球研で推進する超学際研究は大きな意味合いを持ちます。人間のさまざまな社会経済活動と地球環境との関係性を改善しようとする地球環境問題を対象とする研究は、時間軸の長短は研究の種類によって異なるものの、最終的には実際の社会経済活動に何らかのインパクトをもたらす必要があります。社会経済活動に係るさまざまなアクターと協働して研究を進める超学際的アプローチは、インパクトをもたらすうえで最も有効な方法の一つです。一方で、超学際的アプローチはすぐれてコンテクストに依存することもあり、「こうすれば超学際的アプローチはうまくいく」という汎用的な方法論が現時点で確立されているものではないと考えます。であるからこそ、皆さんが解決に貢献しようとするテーマに加えて、超学際的アプローチの改善という挑戦すべきテーマが地球研では常に皆さんの前に用意されています。学際性の確保のためには自分とは異なる専門分野への「越境」が必要となるのと同様に、超学際的アプローチにおいては、各アクター集団で共有される規範や内在するロジックを理解する必要があります。容易な作業ではありませんが、そのような試みが内実を伴う超学際的アプローチの前提であるだけでなく、それを通じて皆さん自身の研究上の視野が大きく広がるチャンスをもたらすと信じています。  

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