今年の5月はずいぶん寒い日が多い月でした。下旬には新型インフルエンザが流行というニュースに翻弄され、体調を崩された方もずいぶん心配されたかと思います。関西地方では学校の休校が相次ぎ、町に出るとマスクをしている人々が目立ちました。関西では、電車などでうっかり咳でもしようものなら「非国民」のような白い眼でみられるほどでした。
太陽の黒点活動が100年ぶりに低下しているという報告もあり(http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2009040801&expand)、わたしの小中学生の頃は、氷河期になって人類が滅亡するという話が「地球環境問題」だったのを思い出しました。6月になってもうすら寒くて、どんな夏になるのでしょうか?
皆様いかがお過ごしでしょうか?
第一次原稿〆切を過ぎ、原稿が集まってきたところです。さっそく原稿をお寄せいただいた方々に篤くお礼を申し上げます。
みなさま、ご多用の折、ほんとうに申し上げにくいのですが、このシリーズはプロジェクトの統合的な成果となるという重要性を改めて認識していただき、
まだの方はお急ぎの上、よろしくお願いいたします。
2009年5月9-10日に東京大学駒場キャンパスで行いました。ご参加のみなさま、熱心な討論をありがとうございました。
研究会の内容詳細は以下のURLでご確認いただけます。
URL: https://www3.chikyu.ac.jp/retto/naibu/EnvHistWG.htm
ID: rettomember
pass: 24702507
環境史年表作成の中間発表(個別の地域班であげられたさまざまなケーススタディを掘り下げて、どのような年表ができつつあるのか)と
「環境史年表」(生態系ごとの通史)の青写真作成を目標に研究会を行いました。
中間報告としては着々と進んではいるものの、これから解決すべき問題点として、以下が示されています。
・プロジェクト全体として、どのような外形にするかを考える⇒トップダウン的にやり方を決めたほうがよい
・プロジェクトの地球研メンバーで取り組む部分(通史的なもの,花粉)と各班で取り組む部分の分担を明確化する
・いかにしてわかりやすい年表を作るか
・花粉ダイヤグラムなどのプロキシをどのように年表に反映させるか
・「資源」の定義をしないと混乱をよぶ
・WG担当者と総論執筆者の連絡を密にする、とくに環境史年表とはどういうものかを各論などの執筆者に説明。
これを受けて地球研に帰ってから早速次回の研究会に先立ち,第3.5回研究会を開きました。
2009年5月21日13:30〜15:30、総合地球環境学研究所4研究室
参加者:湯本・石丸・川瀬・瀬尾・佐々木・辻野
この研究会で確認できたことは、
WG研究会には3つの究極目標:
(1)数値データや年表データを重ねあわすことで個々の環境史を詳細に見ること.
(2)さまざまな生態系(各巻)での自然利用の通史を描く.
(3)これらの事例研究を積み重ねて,さまざまな生態系を含む日本列島での人間と自然の関係のある種のパタンを見出す(一般化・抽象化).
があるものの、
至近目標である「シリーズ本の中での見取図として環境史年表」作成と
究極目標である「日本列島におけるさまざまな生態系での自然利用の通史」を混同していたことが指摘されました。
「シリーズ本の中での見取図として環境史年表」は目標(3)を受けて作成されるものではありますが、時間的な制約があるので、生態系ごとのテーマを設けてそれに沿って工夫した図を作成する必要があることが確認されました。
また、「資源」の定義をしないと混乱をよぶとの声ありましたので、これらに関しては早々に概念の整理をしようと思います。
なお、次回第4回環境史WG研究会は9月前後にWGとしては最終的な結論・結果を、コアメンバーと共有することが目的として行う予定です。
当日の午前中まで同じく駒場キャンパスで行われていたJBONワークショップからも何名か見えられて中身の濃いワークショップになりました。
発表していただけた皆様、参加していただきました皆様にお礼申し上げます。
日時:2009年5月10日13:30〜18:00
場所:東京大学駒場キャンパス
プログラム:
湯本貴和 趣旨説明
今村彰生「生物・文化多様性はなぜ大切か?」
矢原徹一「伝統知のなかの賢明な利用」
松田裕之「生態学からみた賢明な利用」
白水 智「前近代の日本列島における資源利用をめぐる社会的葛藤」
原田(森元)早苗「日本におけるコモンズとガバナンス」
安渓遊地「環境ガバナンスからみた賢明な利用と非賢明な利用」
1)湯本からは、プロジェクト外の参加者もあったので、本ワークショップ趣旨と列島プロジェクトの概要を説明しました。
2)今村さんからは、生物文化多様性というまだ確立していない概念の検討を加えていただきました。「生物文化」なのか、「生物・文化多様性」(生物多様性と文化多様性とその相互作用?)なのかという根本的な問題もまだ未解決ですね。
3)矢原さんからは、ジャレード・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』や『文明崩壊』などを例に挙げて、西欧科学と伝統知の対比をしていただきました。もっと、このプロジェクト自体の成果のインプットが必要であることが、歴史系の参加者から指摘をいただきました。またあとの討論(この日に留まらず、事後に何人かの方々からメールでのご意見もいただきました)では、「縄文持続社会」「江戸循環社会」といった日本で流行りの言説について、これだけの歴史学者、考古学者、人類学者が揃っているのだから、きちんと学問的な検証を加えないと、このプロジェクト自体の存在意義を問われることになるだろうという、根源的な厳しいご意見も伺っています。
4)松田さんからは、生態学的に賢明に、持続的利用が可能であるような生業スタイルを、世界各地の漁業を中心に紹介していただきました。国民国家で発達した明文化された法制度(国内法だけではなく、それを外そうした国際法でも)と比較して、日本でのコミュニティー漁業の慣習法を取り込んだ非明示的な漁業法の柔軟性と不統一性など、今後このテーマの中心的な課題を示していただきました。
5)白水さんからは,資源利用をめぐる社会的葛藤を、歴史系の研究者としてはきわめて大胆に整理していただきました。プレゼンの最後の部分を引用しますと、「これまで暴走的な利用による資源枯渇があったが、一方ではガバナンスによって相当量の自然資源が保全されてきたと考えられる。ただしガバナンスの要請は必ずしも(資源管理を)直接の目的としてきたのではない.すなわち人間-自然の関係に発する要請ではなく、人間-人間という社会的関係性からの要請という側面が重要であり、結果的に資源保全が果たされてきたということもできる」。人間というものが一枚板ではないのと同様に、自然といっても一枚板ではなく、ある生物種が増える環境では、別の生物種が減る環境となっている生態学的な事実も考慮しなければなりません。この根本課題こそが、この文理連携アプローチのプロジェクトの真価が問われるのでしょう。気が引き締まる思いでした。
6)原田さんからは、コモンズとガバナンスからみた賢明な利用を、京都保津川の筏流しを例にとって説明していただきました。コモンズとガバナンスの概念的なレビューがもう少しあればよかったかと思いました。
7)安渓さんからは、重層するガバナンス間での対立や協力を通して資源枯渇の回避ができる例があることや、「賢明な利用」への道があることを発表していただきました。よく地球環境問題は、「だれが加害者かだれが被害者かわからない」点が従来の公害問題とは大きく異なるということがいわれます。かつての公害問題は、少数ではあるが死に至るほどの深刻な健康被害を受けた方々からの企業犯罪の告発というかたちだったのですが、現在の地球環境問題では地球温暖化や生物絶滅も含めて、多くの人々にとってはさほど深刻な身体的・金銭的な被害がないけれども(ということは、いまの法制度下では法廷にもっていくときに原告の適格性が問われることになります)、かたちをかえた明確な企業犯罪、国家犯罪を「だれが加害者かだれが被害者かわからない」という言説で野放しにしかねないのだということを、深く深く指摘していただいたと理解しました。
最後に、わたしたちが考えなければいけない「賢明な利用」は短期的な利益が望めるかということではなくて、生物としても社会としても末永く維持されていくためにはどのような問いかけができるのか、そこでは長期的利益の追求よりも、長期的リスクの回避という視点で議論していかねばならない、というまとめになりました。
研究会の議事録などは以下のURLでご確認いただけます。
URL: https://www3.chikyu.ac.jp/retto/naibu/bioculWS2009.htm
ID: rettomember
pass: 24702507
とくに行事は予定しておりません。
5月8-10日 GEOBON会議(東京)
5月10日 生物文化多様性ワークショップ(東京)
5月11日 列島プロジェクト連絡会(月に一度、地球研のメンバーで事務連絡や会計、イベント対応などを議論しています)
5月12日 第1回島の将来を考える勉強会(財団法人日本離島センター、東京)
5月16日 野生生物保護学会理事会(東京)
5月18日 WWFJ自然保護委員会(東京)
5月21日 環境史年表WG3.5回会議
5月24日 インフルエンザのため京都大学総合博物館でのサイエンスカフェは延期
5月27日 多様性プログラム定例会
6月1-2日 御所野遺跡植生整備委員会(一戸町、岩手県)
6月4日 三井物産・環境月間催し物「生物多様性について知ろう」講演(東京)
すでに奄美・沖縄では梅雨入り、関西も今週には梅雨入りかもしれません。みなさま、雨にも負けず、風にも負けず、お仕事にお励みください。
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湯本貴和
Takakazu YUMOTO