2009年4月2日のご挨拶(湯本より)

日本列島プロジェクトのみなさま
(Bcc.ですべてのメンバーにお送りしております)

新年度が始まり、皆様方もまた新しい気持ちでそれぞれの職場に出勤されたこ とでしょう。
けさの京都は比叡山が雪化粧をしていました。4月には珍しいことです。
おととい京都・仁和寺の桜守をされている第16代佐野藤右衛門さんのところ に、ボストン大学のRichard Primack先生(「保全生態学」の教科書を書いて いる生態学者で、個人的には湯本の命の恩人、現在は地球温暖化と鳥の渡り時 期やサクラの開花時期の研究をされてます)をお連れしたとき、佐野さんは 「今年のような変な季節はこれまで経験したことがない」とおっしゃっていま した。冬が暖かくサクラのつぼみが膨らんだのに、急に寒くなり、そのまま止 まってしまったと。このような気候変動もわたしたちのプロジェクトに無関係 ではないのですが。

ーーー中部班報告会「秋山の自然と人間−その歴史と文化を考える−」
長野県栄村で恒例の中部班報告会が2008年3月7日(土)栄村役場、8日(日)秋山 郷総合センター「とねんぼ」で開催されました。それぞれ約80名と約60名 の参加者がありました。地元報告会と称していますが、わたしたち自身がお互 いの研究内容を理解するためにたいへん重要な役割を果たしているという思い を強くしました。秋山と役場と2カ所でおこなったのも、たいへん好評だった と思います。来年も3月6日(小赤沢)、7日(栄村役場)で開催する予定で す。

ーーー第55回日本生態学会大会
2008年3月17日〜21日 で岩手県滝沢村の岩手県立大学で行われました。
須賀丈・田中洋之・丑丸敦史・湯本貴和.長野県における希少マルハナバチ類 の分布特性
T29-2.湯本貴和.里山の生物多様性が支えている生態系サービス(企画集会 「ミレニアム生態系評価里山里海サブグローバル評価」)
S16.シンポジウム「北東北の縄文社会と環境変動」企画者:湯本貴和・山田 昌久
S16-1.辻誠一郎.北東北の植生変遷と環境変動
S16-2.吉川昌伸.花粉から見た縄文のクリ林 S16-3.木村勝彦.建物柱材の 年輪解析から見た木材利用
S16-4.山田昌久.縄文人の森林交渉力ー実験考古学からのアプローチー 総合 討論「縄文里山を考える」
の発表がありました。

湯本の「里山の生物多様性が支えている生態系サービス」では、秋山のこれま での発表会の資料から、秋山の土地利用と生業の変遷とさまざまな生態系サー ビス(焼畑、山菜利用、狩猟など)の関係という話をしました。生態学者がや ると、自然にはこんな効用もこんな効用もあるという供給サイドの話になるの ですが、ここでは人間の暮らしからみて生物多様性はどう役に立っているのか という話をして、たいへん好評でした。「ところで、秋山って里山だっけ?」 という質問もありましたが、これまでの水田耕作中心の里山論ではつまらない ので、あえて山里の話をしました。
事後承諾となりましたが、中部班のみなさまのパワーポイントを適宜使わせて いただきました。

ーーー日本森林学会公開シンポジウム 「これからの里山 −生物と文化の多 様性を見つめて」
3月26日(木)に京都大学百周年時計台記念館で開催されました。500人用のホ ールがほぼ満席460 名の参加でした。まず、山折哲雄さんが基調講演として、 比叡山でながく修行した親鸞は奥山の思想、早々に比叡山から降りて中国にわ たったあと、永平寺を興した道元は里山の思想、というお話をされ、そのあ と、プロジェクトメンバーの深町加津枝さんの進行で、同じくメンバーの大住 克博さんや湯本がパネラーとして、短い発表と意見交換をしました。ここでは 大住さんは人間と自然の「共生」といっても、ほとんど自然にインパクトを与 えない状態から、資源枯渇の近いものまでずいぶん幅があるという話をなさ り、湯本は2010年のCOP10でSATOYAMA Initiativeというけれども、本当に国際 発信するべきはなんだろうかという話をしました。
この話題に関しては、今年の10月で中国の昆明で開催される国際人類学会 で、このような発表もします。

YUMOTO Takakazu Sc.D. (ecology)
"Wise use" in Japanese SATOYAMA and its self-orientalism
日本の里山における「賢明な利用」とその自己オリエンタリズム
(SATOYAMA is a natural environment impacted by human use in rural Japanese landscapes. Japanese government recently decided to disseminate an idea called “SATOYAMA initiative” to be used in COP 10 of the Convention on Biological Diversity in 2010. It contains the message that an ideal harmony has existed between Japanese and nature, and that SATOYAMA is a good example of a "wise use" or a sustainable use of ecosystem. In spite of such message, we have revealed that there has been a long history of "unwise use" of natural resources in Japanese Archipelago. Therefore, SATOYAMA initiative may be based on a typical example of somewhat nationalistic “self-orientalism”.)

蛇足ですが、自己オリエンタリズムとは、サイードという人類学者の「オリエンタリズム」という本にちなんだものです。そもそも、オリエンタリズムと は、西洋人が勝手な幻想をインドや中国、日本、あるいはアメリカ先住民に投影して、いわく東洋では自然と人間が対立せず、共生している、いわくアメリ カ先住民は資源を枯渇させない知恵がある、などなどです。自己オリエンタリ ズムというのは、それを真に受けて、日本はやっぱり自然と共生してきたのだ、日本の里山は世界に誇るべき財産だなどと、自分で信じて吹聴することで す。

ーーー4月の行事をご紹介いたします。
「堀田ファイル」寄贈記念シンポジウム開催.
〜〜「堀田ファイル」とは,堀田満博士が地球上のあらゆる有用植物に関する 文献,写真,スケッチなどをおよそ半世紀かけて収集し整理したデータ群で す.その量はA4紙に換算するとおよそ30万枚にも及びます.「堀田ファイ ル」はインドネシアのボゴール植物園に集積されたデータなどに匹敵する世界 有数の規模を持つものであり,植物分類学をはじめ,薬学,育種学,農学など 自然科学ばかりか,文化人類学,言語学など人文社会科学の発展にも資するこ とが期待され,2005年度からは学術振興会の科学研究費を受け,デジタルアー カイブ化をすすめております.また堀田ファイルのような広域な学問分野にま たがる研究資料の発掘・保存は地域環境情報のネットワーク化を推進する当研 究所にとっても大きな財産になると考えられ,このたび「堀田ファイル」を地 球研へ寄贈していただきました.本シンポジウムはその寄贈記念と彫った博士 の之までの業績への感謝と慰労をこめて開催します.

日時:2009年4月13日(月)14時ー16時
会場:京都市北区上賀茂本山457-4 総合地球環境学研究所 講演室
京都市営地下鉄「国際会館」から京都バス(京都産業大学行き、または市原行 き)にて「地球研前」下車すぐ。または叡山電鉄「京都精華大前」または「二軒 茶屋」下車、徒歩10分。
アクセスマップはhttp://www.chikyu.ac.jp/
プログラム14:00~16:00(総合司会:瀬尾明弘(地球研プロジェクト研究員))
挨拶:中野孝教(地球研・教授)
感謝状贈呈および挨拶:立本成文(地球研所長)
講演:堀田満(西南日本植物情報研究所所長)
ビデオ上演
データベース披露:佐藤洋一郎(地球研副所長・教授)
会場:総合地球環境学研究所・講演室
お問い合わせ:木村栄美(地球研・研究員)tel075-707-2389, fax075-707-2508,sato@@chikyu.ac.jp(申し込み不要)

堀田満(ほった みつる)プロフィール:〜〜京都大学理学研究科終了.理学 博士.専門は植物分類地理学.神戸女子大学講師,京都大学助教授,鹿児島大 学教授,鹿児島県立短期大学学長を経て,現在は西南日本植物情報研究所所 長.鹿児島大学名誉教授.主なフィールドはマレーシア熱帯と日本列島.40年 以上にわたり植物系統分類や地理学の調査・研究に従事.南方熊楠賞の今年の 受賞者です。

ーーー5月10日東京大学駒場の会合
前回、以下のようなお知らせをしました。
5月10日には全体のまとめとなる第1巻のための研究会を東京大学駒場キャンパ スで開催する段取りにしています。生物多様性締結国会議COP10に向けて、日 本の生態学者を中心にALLJAPANの体制をつくろうとしていて、その会合が5月 8日から10日午前にかけて駒場で行われます。その最終日の午後をおかりし て、懸案の「賢明な利用」とななにか、それはこれまで日本ではどのように実 現し、また実現していなかったのか、将来どのようなことを考えていけばいい のか、などについて主に第1巻の執筆者のみなさんに発表していただきたいと 思っています。
まだ、プログラムが固まっていないので、でき次第お知らせします。

ーーーシリーズ本について
執筆依頼が遅れながら、ようやく先月末に届いたことだと思いますが、いろい ろ不備があって出版社とやりとりが続いています。三戸幸久さんには、名簿で 抜けていたのですが、改めて依頼がいったと思いますが、いかがでしょうか? 橘昌信さんと大場修さんは住所まちがいで返ってきたようです。石丸恵利子さ んと森本仙介さんには、タイトルが届いていなかったために執筆依頼ができて いなかったようです。早急に対処しますので、よろしくお願いいたします。

以下は確認事項です。 5月末に、総論(各巻の総論、人と自然(旧6巻で現1巻))以外の第1稿を 提出していただく。
8月末に、この第1稿をみながら、各巻の総論の執筆者と「人と自然(旧6巻 で現1巻)」の執筆者は第1稿を提出していただく。
10月末には、すべての執筆者が査読・校正用の第2稿を提出していただく。
ここから、査読・校正のプロセスが約1年。
2010年の8月いっぱいに印刷所に入稿。データの差し替え期限もこのあたり (引用する必要のある(おもに理系の)原著論文は、このあたりで受理の目処 をつけておいてください)。
*第1稿は、序章、終章を書くため、あるいは互いの重複を調整するための暫定稿
*第2稿は、査読・校正の対象となる原稿

各巻は4部12章4コラム、序章、終章で320ページを基本とする。
1章あたり20ページ、1ページ1000字。
1コラムあたり2ページ、1ページあたり1100字。
序章と終章は各5ページ
文献は巻末にまとめて10−20ページ見当。

2章分の追加を認める場合があるし、コラムも4ページものも可能(要相談)。
文体は「である」調。
文中の図表、写真はモノクロで、口絵カラーあり。
ハードカバー。

ーーー最後に先月の湯本の足跡は、
3月1日 栽培植物班研究会(大阪府立大学)
3月3日−4日 インキュベーション報告会(地球研の新しいプロジェクト提 案を審査する)(地球研)
3月6日 地球研運営会議(京都)
3月6日−9日 中部班報告会・打ち合わせ(長野県栄村)
3月10日 地球研多様性領域プログラム研究会(地球研) Vanishing lessons of diversity: Perspectives and differences between biodiversity and linguistic diversity
3月11日− 14日 韓国・木浦大学の島嶼文化研究所と研究協定締結のシンポジウム
3月15日 早春恒例の地域の溝さらい
3月16日ー21日 日本生態学会盛岡大会
3月26日 日本森林学会シンポジウム
3月27日 名古屋市立東山動植物園委員会
3月31日 Richard Primack氏と嵐山と佐野藤右衛門氏事務所を訪問

いろいろお願いばかりになりますが、よろしくお願い申し上げます。新年度と なって、職場を移動される方は、早めに高橋のほうまで、変更のお知らせをい ただければ幸いです。

湯本貴和
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Takakazu YUMOTO

<以下は毎回お知らせしている備忘情報です>
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各班の動向を辻野までお知らせください.

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さらに,ページが入って印刷された段階で再度お知らせください.
謝辞へは以下の一文を加えていただけましたら幸いです.

This study is partly supported by Research Project `A new cultural and historical exploration into human-nature relationships in the Japanese archipelago' of the Research Institute for Humanity andNature.
なお本研究は総合地球環境学研究所プロジェクト"日本列島における人間−自然相互関係の歴史的・文化的検討"の補助を受けている.

<情報更新など>
所属の変更などがございましたらyumo-jimu@chikyu.ac.jpまで随時お知らせください.