第13回地球研フォーラム「地球環境をどうデザインするか?」

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第13回地球研フォーラムは、2014年7月12日(土)に京都国際会館で開催されました。今年度のテーマは「地球環境をどうデザインするか?」。かなり大きなテーマですが、昨年の第12回地球研フォーラムのテーマである「“共に創る”地球環境研究」を受け継ぎながら、研究からデザインに踏み込みました。あらゆるシーンでデザインを考えている人たちを招き、「共に創る」ことを試みたのです。

そのために、「共に創る」場をデザインすることを意識しました。具体的には(1)ツイッターを積極的に活用したこと、(2)ユーストリームを利用して、インターネットで同時放映を行ったこと、(3)登壇者と参加者が対話しやすい空間づくりを行ったこと、(4)高校生など若者の参加を積極的に呼びかけたこと、(5)京都産業大学3年生の飯田実乃里さんが司会を務めたこと、があげられます。

その飯田さんの司会のもと、当日のフォーラムは進められました。まず、寺田匡宏さん(地球研特任准教授)が趣旨説明で地球研の取り組みを紹介しながら「地球環境をデザインすること」を強調しました。

最初の話題提供者であるサイモン・ケイナーさん(地球研招へい外国人研究員/セインズベリー日本藝術研究所 考古学・文化遺産センター長/イースト・アングリア大学日本学センター長)が「石器時代の環境観とデザイン:現代社会へのメッセージ」と題して報告し、土偶などをとおして石器時代の人びとの環境観を紹介しました。

続いて筧祐介さん(issue+design代表)から「ソーシャルデザイン:社会課題の創造的解決手法」という報告がありました。ソーシャルデザインとは「人間の持つ創造の力で、社会が抱える複雑な課題の解決に挑む活動」であり、被災地でのボランティアと被災者のコミュニケーションを促す「できますゼッケン」など具体例が紹介されました。

3番目の龜石太夏匡さん(株式会社リバースプロジェクト代表取締役)の報告「人類が地球に生き残るための株式会社」では、人間がもたらした環境や社会への影響を見つめなおし、新たなビジネスモデルと共に未来の生活を創造していくための活動として、企業の顔となる制服を、環境・社会に配慮した“エシカル素材”とスタイリッシュなデザインで制作していく取り組みなどが紹介されました。

4番目の半藤逸樹さん(地球研特任准教授)の「地球環境と環境観ネットワーク: 変えられない「閾値」と変えられる「限界」」という報告では、もう引き返すことのできないポイントに行く前に、世界中の人たちが環境観でつながることで限界は変えることができるのではないかという問題提起があり、その手法としてのアプリ「環境観でつながる世界」の紹介がありました。

会場からの質問やコメントは、ツイッターを通じて行い、スマートフォンなどを持っている人はスマートフォン等で、持っていない人は会場で配られた紙に120字以内(ハッシュタグなどの文字数を考慮)でコメントや質問を書き込み、係りがそれをツイッターに打ち込みました。会場に来られなかった皆さんも、ユーストリームでオンライン参加し、ツイッターを活用してくれました。

4人話題提供者に加え京都在住の書家である川尾朋子さんが参加したパネルディスカッションでは、座長である阿部健一さん(地球研教授)と安富奈津子さん(地球研助教)が、ツィッターからのコメントを軸に地球環境をどうデザインするか?というテーマのもと議論をすすめました。

「地球環境をどうデザインするかというのは、大たんで不遜なテーマですね。デザインするということは意のままにするということになるでしょうか?」という本質的な問いかけや、「デザインとは多くの人の心に訴え、行動を呼び起こすためのプロセスであるならば、地球環境という大きすぎるテーマでは、どういったデザインが可能なのでしょうか?」といった解決に向けた具体的なデザインを問うコメントもありました。また「可視化も1つの方法ですが、デザインの為のデザインにならないようにしてほしいですね。研究者の方々」といった研究者に対する厳しめのコメントもありました。

締めくくりは、書家の川尾さんによる「色紙に揮毫」。川尾さんが今回のフォーラムの議論から感じ取った言葉は「共」。「共に創る」をテーマにしたフォーラムの最後を飾るにふさわしいパフォーマンスでした。

今回の参加人数は約170人、ツイート数は143件でした。ツィッターを用いることによって多くの声を拾い上げることができました。その一方で、多くの声を拾い上げることと共に創ることの間には、まだまだ距離があるように感じました。声を聞くこととその声が議論に反映されることは、また別の問題だからです。コメントや質問の中に研究者に厳し目のものが少なくなかったことは、こうした問題を表しているかもしれません。今回のフォーラムで見いだしたのは、地球環境研究における参加と協働のあり方、問題の解決のデザイン、ソーシャルメディアの使いこなし方といったさまざまな課題です。課題を発見することが、解決に向けた一歩であるならば、「共に創る」は一歩前に進んだといえるかもしれません。

(文責・総合地球環境学研究所 准教授 菊地直樹)

動画配信

  1. オープニング
  2. 「石器時代の環境観とデザイン:現代社会へのメッセージ」
  3. 「ソーシャルデザイン:社会課題の創造的解決手法」
  4. 「人類が地球に生き残るための株式会社」
  5. 「地球環境と環境観ネットワーク: 変えられない「閾値」と変えられる「限界」」
  6. パネルディスカッション
  7. パフォーマンス
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