近年、中国の企業の海外進出にともない、中国の労働者や小売り商人が、さまざまな国に進出している。これらの中国人は、中国の企業駐在員と異なり、現地の労働者階級や商人と密接な関係を築き、小売りなどサービス業を中心とした生計を営み、現地住民の生活の向上を貢献している一方、地域社会の在り方にも重大なインパクトを与えている。本研究会では、長年にわたりアフリカに進出した中国人に着目して現地調査を行ってきた小川さやか氏及びシ・ゲンキン氏を話題提供者としてお招きし、アフリカに進出した中国人と現地住民との関係やアフリカ市場を席巻する中国製品に対する現地消費者の購買行動について報告いただく、中国よるアフリカ諸国への影響を検討する。
- 日 時
- 2015年10月30日(金) 15:00 - 17:30
- 場 所
- 総合地球環境学研究所 セミナー室1・2(⇒アクセス)
- 主 催
- 総合地球環境学研究所
- NIHU・エコヘルス
- 中国環境問題研究拠点
- コメンテーター
- 人間文化研究機構・理事 小長谷 有紀
- 問い合わせ
++プログラム++
- 15:00 - 16:00 タンザニア市場を席巻する中国製品の licit/illicit をめぐって―携帯電話 を中心に
- 16:00 - 17:00 飽和市場における摩擦への対処-ボツワナのチャイナショップを事例に
- 17:00 - 17:30 総合討論
小川さやか(立命館大学先端総合学術研究科・准教授)
今世紀に入り、アフリカをはじめとした発展途上国と中国との草の根の交易が急速に活発化している。偽物やコピー商品をふくむ廉価で粗悪な中国製品は、タンザニアの市場を瞬く間に席巻した。これらの偽物やコピー商品は、購買力の低いタンザニアの消費者に、最先端の技術やグローバルな流行を消費させることに貢献する一方で、「買っては壊れ、また買う」を頻繁に繰り返す、ある種の「使い捨て文化」を強いることともなっている。本発表では、タンザニアに輸入された中国製品をめぐるタンザニアの商人および消費者の評価と購買行動を明らかにすることで、コピーや偽物といったモノの道義的な合法性 licit と違法性 illicit をめぐるローカルな論理を明らかにする。
シ・ゲンキン (京都大学大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)
ボツワナでは中国人経営者による商店-チャイナショップが90年代から都市の中心部から郊外にかけて増加傾向にある。急増したチャイナショップは雇用の増加、安価な日用品の提供などさまざまなメリットを現地社会へ与えている。しかし、近年ボツワナ政府によるチャイナショップ経営への規制が強化され、多くの経営者が進退窮まる状況に陥っている。政府からの圧力のみならず、チャイナショップ経営者は現地住民との摩擦という課題にも直面している。これまでチャイナショップと現地社会の間では双方に有益な関係を構築することで共存してきたが、近年の状況は双方の期待を裏切っている。
本研究ではボツワナにおけるチャイナショップの中国人経営者と現地住民との関係をミクロなレベルで参与観察することによって、摩擦が引き起こされる原因を明らかにすることを目的とする。そして、中国人経営者ら飽和市場においてはどのようにさまざまな摩擦を切り抜けながら、生き残り戦略をかけているかを調べた。調査は2011年9月から2015年9月の13か月間、主にボツワナの首都ハボロネで実施した。
研究会の詳細については こちら(PDF) をご参照ください。