黒河流域の環境の変化


1. 水循環への影響

 黒河流域の河川や湖沼では,近年水量が著しく減少しています.特に,黒河末端の湖,居延澤は,現在全く水がなくなってしまいました.原因は,中上流部による過剰な水利用や,気候変動による降水量の減少などが考えられます.

黒河流域の河川流路の変化(Wang and Cheng, 1999)

黒河流域の河川流量,湖沼面積の変化(Wang and Cheng, 1999)
1930以前 1960 1980以降
臨水河(10^8 m3/year)

9.0

0.0

0.0
洪水河(10^8 m3/year) 1.3 1.19 0.0
山丹河(10^8 m3/year) 0.95 0.67 0.0
居延澤(km2) 267.0 213.0 32.3

2. 地表水および地下水の水質の悪化

 河川や湖などの地表水や,地下水の溶存ミネラルが近年上昇しています.これは河川流量の減少と下流部での蒸発量の増加によるものと考えられます.

黒河下流部の水質の変化(Wang and Cheng, 1999)
.

扇状地

下流域
. 塩分濃度(g/l) 化学成分タイプ ミネラル濃度(g/l) 化学成分タイプ

地表水

< 0.80

HCO3-Ca-Mg

3.0-78

SO4-Cl-Na-Mg

地下水

0.1-0.7

HCO3-Ca-Mg

5.0-16.0

SO4-Cl-Na-Mg
. . . .

Cl-SO4-Na-Mg

3. 植生の減少

 流域の水分条件の変化に伴って,黒河流域の植物も減少してきました.

張掖周辺の植生面積の減少(Wang and Cheng, 1999)
.

1960s

現在

水生植物

120,000 ha

90,000 ha

草地

1200-1800 kg ha-1

450-750 kg ha-1

4. 土地の塩化

 黒河の中流部から下流部にかけて,水分条件の変化と植生の減少は,土壌の塩化を促進しました.

黒河流域の砂漠面積と塩化した土地(Wang and Cheng, 1999)
地域

砂漠面積

塩化土壌

1949年(m2)

現在(m2)

面積(m2)

臨沢 Linze

124,896

196,039

62.20

4,258.4

19.07
高台 Gaotai 249,853 261,303 59.34 6,446.7 24.45
金塔 Jinta 382,397 435,737 23.20 3,695.2 13.2
山丹 Shandan 0.0 10,897 5.86 620.5 0.72
張掖 Zhangye 35,137 37,842 19.2 7,327.3 12.4


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