ラオスのツノゼミ
 


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総合地球環境学研究所
「熱帯アジアの環境変化と感染症」プロジェクト
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第2回生態史研究会・第3回地球研資源領域プログラム合同ワークショップ

東南アジアの淡水魚‐水と人間をつなぐ   

日時:2008年10月10日(金)15:00~18:20
会場:総合地球環境学研究所・セミナー室1・2

(プログラム)  発表者の名前(赤字)をクリックすると発表資料(PPTファイル)がひらきます。

  司会:横山智(熊本大学文学部)

1) 15:00~15:10  
  総合地球環境学研究所副所長  秋道智彌
  「研究会テーマの趣旨説明」

 東南アジアの大陸部と島嶼部はかつて最終氷期にスンダ大陸として低平な陸域を 形成し当時から淡水魚の生息域は広範囲にわたっていた。現在、大陸部と島嶼部 の淡水魚相は属レベルで共通種が7割近い均質性を示すのはこうした理由による [多紀 1997]。今回の研究会はもっぱら大陸部の淡水魚類を取り上げ、人間と 水との多面的な関わりを資源管理と感染症に焦点をあて、その研究の意義を浮き 彫りにする試みである。 人間と水の媒介項としての淡水魚類を、生態史研究のなかで取り上げる意義につ いてはすでに一部報告している[秋道 2008]。生態史研究では時間を基軸とす る動態に関する考察(processual ecology)が重要であるが、今回は歴史の層を 丁寧に掘り起こす伝統的な手法を提示する訳ではない。むしろ、現代的な位相に 焦点を当てて淡水魚類の利用による人間の身体への影響や漁獲圧の変化と資源保 全の動態に絞って横断的に問題群を明らかにする試みに挑戦してみたい。 
 
具体には、淡水魚類の利用(強度、効率)が一方で対象魚類の生物学的な多様性 や資源量に及ぼす影響(石川)と、魚食が人間の身体や活動に及ぼす影響(矢 島、友川・辻)とを、ともにアジア・モンスーン地域における同時代の地域環境 問題として位置づける視点を共有することを大きなねらいとしている。ミトコン ドリア研究と感染症や魚食習慣の研究は一見、乖離しているような印象を受ける が、インターフェイスとしての淡水魚類を捉える以上、これらのアプローチをお なじ学的アリーナで考える視点は不可欠である。なぜなら、生活者としての漁民 は魚を獲ることと食べることを日常的に体現しているわけであり、学問として水 産資源学と感染症学、人類学に専門化して別々に論じるだけでは、あまりにも現 場のリアリティー(関わりの実践者である漁民や農民へのまなざし)に欠けると おもわれるからである。 このような点からすれば、個々の研究からいかなる示唆が政策立案にむけて可 能かについても議論ができればと考えている。研究者がえらそうにいうべきでは ないことなのだが、魚類資源の保全と住民の健康増進と疾病の撲滅は東南アジア 諸国の政府にとりいずれも重要な政策課題であることは間違いない。であるとし て、東南アジア大陸部における淡水魚の生食習慣と資源管理の問題を現地政府の 異なる部局での議論と同じように「分業」するのではなく、いっしょくたに考え てはどうか、という立場が外部の研究者にあってもよいかと考えるがいかがだろ うか。 以上の視点は、川や湖沼の魚と住民の暮らしや文化をいかに統合的に結びつけて 考えるかという、学術のみならず政策提言への道筋を明らかにすることにもつな がるのである。このことを踏まえて、今回の研究会における議論が個別の検証論 はいうまでもなく、新しい知の発見と創造につながることに期待したい。

2)15:10~16:10  
  東海大学海洋学部水産学科  石川智士 (地球研ISリーダー)
  「東南アジアにおける淡水魚の遺伝的多様性と保全について」

 東南アジアには数多くの淡水魚が生息しており、地域住民の重要なタンパク質供給源となっている。しかし、その多くの魚種において生態学的知見は乏しい。一方で、近年淡水魚資源量の悪化が叫ばれており、持続的利用にむけた資源管理方策の立案と施行が急がれている。今回は、資源管理を行う上で重要な集団構造について遺伝学的なアプローチで行った研究結果をもとに、東南アジア地域での淡水魚資源の持続的利用について、ならびに魚と人のかかわり方について議論する。

 休憩  16:10~16:20

3)16:20~17:20  
  東京大学農学生命科学研究科農学国際専攻  矢島綾
  「ベトナム紅河デルタの淡水魚生産と肝吸虫感染リスク」

 ベトナム北部の紅河デルタ地帯では昨今、シナ肝吸虫症への高い感染率が局所的に報告されている。肝吸虫症への主要な感染原因は淡水魚の生食である。本発表では、紅河デルタにおける淡水魚の生産・流通実態、魚食とシナ肝吸虫感染の因果関係、淡水養殖環境の汚染実態についてこれまでに行われた調査結果を報告し、紅河デルタにおいて安全な淡水魚を生産するために実現可能な衛生対策について議論する。

4)17:20~18:20  
  広島大学学振研究員 友川幸地球研研究員 辻貴志
  「ラオス中南部のメコン川流域の農村地域における漁労活動とタイ肝吸虫症」

 ラオス中南部のメコン川流域では、淡水魚の捕獲が主要な生業であり、同時に淡水魚は日々の食生活において貴重な蛋白源となっている。近年、メコン川の支流で捕獲されるコイ科の魚を生食することで感染するタイ肝吸虫症が、深刻な公衆衛生上の問題となりつつある。本報告では、これまでのタイ肝吸虫症研究のレビューと当該地域でおこなった住民の漁労活動および魚の摂取習慣に関する調査から得られた知見をもとに、今後の調査研究の方向性と展望を報告する。


 18:30~  懇親会(地球研キッチン)


 

(写真)研究会のようす

第2回セミナーのようす第2回セミナーのようす

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