地域の発展過程の指標としての保健医療−時空間情報学の地域・健康・医療への展開−

日時: 2010年10月2日(土) 13:30−18:00
場所: 地域研究統合情報センターセミナー室
主催:
・京都大学地域研究統合情報センター共同研究「地域情報学プロジェクト」
・京都大学東南アジア研究所G-COEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」
・基盤研究(A)「医療地域情報学の確立:疾病構造に着目した計量的地域間比較研究」

==プログラム==

■第一部:13:30-16:40 :司会(原)
1.感染症GISの展開(仮題)鈴木宏(新潟青陵大学)
2.地球研エコヘルスプロジェクトの進捗状況と課題(仮題)門司和彦(地球研)

■ 第二部:17:00-18:00 総合討論:東南アジアの健康像と保健医療活動:司会(松林)
鈴木(新潟)、門司(地球)、松田(東京家政)、飯島渉(青山)

懇親会:18:30から

■ 趣旨:感染症の発生と流行は、気候や生態系の変化、衛生環境や栄養状態の変化などの影響を強く受けます。つまり感染症は、病原体・媒介動物・物理環境・社会環境・人間に関する統合的な問題として捉える必要があります。ところが従来は、気候・病原体・媒介生物に関する個別的かつ短期間的な研究が主流でした。しかし感染症予防や健康増進の場合、従来の研究に、看護活動・住民参加・保健医療資源配置などの人間環境や社会環境などを加え、総合的かつ長期間的視点から研究しなければなりません。そのため、東南アジアにおいても健康増進を指向した住民参加活動や、社会環境に関するデータの系統的な収集が始まっています。例えばタイでは、Tambonという行政単位において、住民組織・行政組織・医療施設・教育機関などが協同して、住民の経済活動から保健医療に至る広範な改善を目指したプロジェクトが開始されています。ここでは、プロジェクトを評価するための多様な社会指標の収集も進められています。研究・社会活動で収集されたデータは、行政機関などが収集したデータと統合する必要があります。例えば道路開発や上下水道の整備や世帯構成など地方行政機関などが収集したデータと、住民の健康状態や経済状態など研究・社会活動で収集したデータを合わせて分析できれば、地域の特性だけではなく健康状態と生活環境の関連性を明らかにしたり、疾病予測や健康改善のヒントを見つけたりすることも可能かもしれません。疾病や健康に関する多種多様なデータを統合・計量化・分析する手法としてGIS(Geographic Information Science:地理情報学)あるいはそれを発展させたSTIS(Spatio-Temporal Information Science:空間時間情報学)が期待されています。

■ 本研究会は、東アジア・東南アジアにおける感染症を中心とした保健医療の研究や評価における時空間情報学の展開を進めるための知識共有の場です。今回は第一回目として、わが国の保健医療GISに多大な貢献をされている鈴木宏先生(新潟青陵大学特任教授、新潟大学名誉教授)に、「ヒューマンヘルスGISセンター」の活動や、国内外における感染症疫学調査や医療施設アクセス分析などにおけるGISの利用事例についてお話しをお願いしております。また熱帯公衆衛生学において主導的な研究を続けておられる門司和彦先生(総合地球環境学研究所教授)には、熱帯モンスーンアジアの気候や生態系の変化が、直接的あるいは人間生態系を通じて間接的に、マラリアや肝吸虫などの風土病的感染症や人びとの健康全体におよぼす影響を研究する「エコヘルス・プロジェクト」についてのお話しをお願いしております。なお本研究に関心がありそうな若手研究者に、この案内を転していただければ幸いです。