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   総合地球環境学研究所
   「熱帯アジアの環境変化と感染症」プロジェクト
   プロジェクト・リーダー:門司和彦
   〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457番地4
   Tel:075-707-2106(代)
   Email:ecohealth-rihn@hotmail.com
 
©2008 EHP all rights reserved. Last update 2009-07-06                                            Japanese   English


★プロジェクトの概要★


●プロジェクトリーダー
門司和彦  総合地球環境学研究所教授

●コアメンバー

Nick MASCIE-TAYLOR
小林繁男
飯島 渉
Ahmed KAMMURDIN
橋爪真弘
砂原俊彦
山本太郎
大場 保
Boungnong BOUPHA
Sengchanh KOUNNAVONG
Tiengkham PONGVONGSA
Sirajul ISLAM
Paul HUNTER
Zakir HOSSAIN
Mamudur RAHMAN
LE Khanh Thuan
小林 潤
蔡 国喜

ケンブリッジ大学
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
青山学院大学文学部
大分大学総合科学研究支援センター
長崎大学熱帯医学研究所
長崎大学熱帯医学研究所
長崎大学熱帯医学研究所
ブルーエコロジーリサーチ
ラオス国立公衆衛生研究所
ラオス国立公衆衛生研究所
ラオスサバナケット県マラリアセンター
バングラデシュ国際下痢症研究所(ICDDR,B)
イーストアングリア大学(イギリス)
バングラデシュ国立予防社会医学研究所(NIPSOM)
バングラデシュ国立疫学疾病対策研究所(IEDCR)
ベトナム国立マラリア学・寄生虫学・昆虫学研究所(NIMPE)
国立国際医療センター
総合地球環境学研究所

 

研究プロジェクトについて

本プロジェクトは略称を「EcoHealth Project」とし、人口増加と経済発展にともない自然環境・社会環境が変化している熱帯アジア・モンスーン地域で、環境と感染症の関係を総合的に検証し、この地域に暮らす人々の健康と疾病のプロフィールを、その環境変化・社会変化と合わせて、過去、現在、未来にわたって描写・推察していきます。それによって、これまでの狭義の医科学では重要視されてこなかった人間の生存と健康に対する長期的・総合地球環境学的視点の確立をめざします。最終的に2011年度に総合報告書をまとめることを作業目標とします。

 

プロジェクトの目的

本研究は、熱帯アジア・モンスーン地域とその周辺部における環境変化と様々な感染症の興亡の関係を総合的に記述・分析し、この地域の人々の将来の生活と健康に対する長期的・総合地球環境学的視点を提供することを目的とします。具体的には、ラオスにおける人口静態動態システム(DSS)の確立による環境変化と感染症を含む健康事象の変化、バングラデシュにおける気象と生活環境と下痢症の関係などの地域レベルの実証的研究を積み重ね、その上に歴史的考察や総合的討論・思考を積み重ねます。

熱帯アジア・モンスーン地域は雨季と乾季がはっきりした気候で、洪水や旱魃の影響を受けやすい場所でもあります。人びとは、熱帯モンスーン林を切り拓いて焼畑や水田による稲作を行い、残った森を利用して生活をしてきました。同地域では徐々に都市化や産業化が進み、生活も変化してきました。本プロジェクトでは、熱帯アジア・モンスーン地域で暮らしてきた人びとの健康プロフィールの変化を、感染症に焦点をあてて考えていきます。

感染症は、病原体という生物とヒトという生物の相互作用によっておこるものであり、環境に大きく影響をうけます。また、マラリアなどの節足動物媒介性疾患では、それに媒介生物(ベクター)が関連します。そして、それらはすべて、それぞれの生態に関連し、それを覆う気象・気候の影響をうけます。多くの感染症は風土病として存在しており、その個別性に注目することも大切ですが、人間の行動が国境を越えて盛んになった現在では、感染症を地域全体として捉える視点も重要です。本プロジェクトでは、両者を繋ぎ合わせる作業をしたいと考えています。それが、人間の生存と健康・ウェルビーイングとそれらに関連する環境の長期的安全保障、つまり、真の意味での「人間の安全保障」の基礎となると考えます。

研究班の構成・研究方法と対象地域

全体を「フィールド個別研究班」と「総合・総括班」の2つに大別しながら展開します。フィールド個別研究班は、ラオス班(サバナケットDSSの運営、サバナケットマラリア研究、全国データ分析)、バングラデシュ班(気象と感染症研究〈マトラブ地区とダッカ地区〉、フィラリア・土壌寄生虫等全国データベース作成)の2班を中心とし、ベトナム・ミャンマーでのマラリア等の研究、スリランカでの下痢の研究、中国でのエイズの研究なども他機関と連携しながら展開していきます。これに、森林・農業班が協力して環境と疾病発生の関連を分析していきます。

総合班に含まれる歴史・文献班は、衛生関連文書の検討を行います。例えば、第2次世界大戦中に日本軍が残した文書による当時の疾病流行情況などを検討します。

 

図1 本プロジェクトにおける感染症の位置づけ

図1

人間と環境の長期的安全保障問題の一つとして感染症をとらえます
写真 ラオス・サバナケット県・セポン郡の
少数民族の村
写真 ラオス・サバナケット県・セポン郡の
少数民族の村でのマラリア調査
セポン マラリア調査
主な生業は焼畑である。集落周辺の森は、木材の利用と家畜が畑をあらさないように残されている 尿中マラリア抗体を調べた結果、ほとんどの人に感染歴があることが判明した。3村279名の血液検査では172人(62%)がマラリア陽性であった。しかし、顕著な症状があらわれる者は少数である

 

平成19年度までの主な成果と今後の計画

● ラオス班

ラオス保健省・国立公衆衛生研究所、サバナケット保健局と今後5年間のMOUを結び、ラオス統計局、ラオス保健省疾病対策局、同マラリア対策センター(CI MPE)、母子保健センター、スイス熱帯研究所、サバナケットマラリアセンター、ソンコン郡病院、セポン郡と協力して、1)サバナケットDSSを用いた研究、2)サバナケットマラリア班、3)全国班の研究を展開する準備がそろいました。2007年9月にビエンチャンで開かれた第1回ラオス国家保健研究フォーラムの開催をサポートし、研究計画を発表しました。招聘外国人研究員として来日した国立公衆衛生研究所のクナフォンを中心として5年間の計画書を作成し、ラオス医学倫理審査会に提出しました。

地球研生態史プロジェクトで構築したラハナムDSSを用いて母子保健、学校保健(特にタイ肝吸虫感染の発育への影響)、成人保健(タイ肝吸虫の長期感染影響)分野の研究を進めています。そのためのコンピュータープログラムの開発も進めました。また、FS段階で開始したセポン郡での少数民族のマラリア研究をすすめ、森林利用との関係、アセアン東西回廊の完成による人口移動、経済活動の影響を検討する計画を作成しました。本プロジェクトは2007年からの「ラオス国家保健調査5ヵ年計画マスタープラン」に組み込まれました。ラオス全国班は成果をラオスの保健政策に活かす方策を検討し、成果をラオス国家保健研究フォーラムで公表していく予定です。

 

図2 バングラデシュ・ダッカにおける病院でのコレラ患者数の相対危険度と16週間の雨量の関係
雨量
季節等の影響を補正すると、過去16週間に雨量が多い場合と少ない場合にコレラ患者数が多くなる
図3 2007年10月9日朝6時のバングラデシュの洪水による浸水状況
洪水
バングラデシュ・水開発局・洪水予測警戒センター提供

 

● バングラデシュ班 

気象と感染症については、長崎大学熱帯医学研究所の橋爪真弘を中心に国際下痢症研究所と協議を進め、協定の準備をほぼ終了しました。京大防災研、筑波大学、ロンドン大学熱帯医学校と協力して、気象と下痢症を中心とした感染症の研究をマトラブ地区で実施します。ここには1960年代からの優れた疾病データが蓄積されており、それを気象・環境・生活の変化と関連づけて分析していきます。また、フィラリアと土壌寄生虫についてはケンブリッジ大学生物人類学部のマッシーテイラー教授、バングラデシュ疫学疾病対策研究所・予防社会医学研究所と協力して研究を進めます。本年度、フィラリア研究に関するデータベースを構築しました。

● 歴史学・文献班 

青山学院大の飯島渉を中心として、京都大学地域研究統合情報センターの共同研究と合同で2回の研究会を開催しました。これまで主に東アジアが中心でしたが、東南アジアおよび南アジアの衛生資料を系統的に整理、分析していきます。国内にも戦争時の記録などが蓄積していて、実証的な研究が期待できます。

● 農学・林学班 

京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の小林繁男を中心として、「熱帯林とともに暮らす人々の安全保障」の観点から東南アジアの環境・社会変化を検討していきます。

● 人口班 

熱帯アジアの環境と感染症を考える時、人口問題の解明は不可欠です。大場保を中心として人口転換、死亡力転換、出生力転換、都市への人口移動の現状と経緯、およびそのメカニズムの追求をしていきます。

 

関連文献

『人類学と国際保健医療協力』 松園万亀雄、門司和彦、白川千尋(2008)明石書店

『健康転換と寿命延長の世界誌』ジェームス・ライリー著、門司和彦他訳(2008)明和出版