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プロジェクト概要紹介

  • 研究の背景と目的
  • 研究内容
    • 工業部門の排出―石炭流通・品質と使用量の分析
    • 輸送部門の排出―自動車起因の排出推計
    • 認識要因に関するデータ収集と分析
    • 温室効果気体とエアロゾルの観測
    • 大気輸送モデルによる解析
    • 総合解析

  • 研究協力体制

研究の背景と目的

 様々な人間活動の多くは,本来それぞれの国・地域の気候風土,文化や社会経済システムの構造と深く関係しているものです。しかしながら近年においては,経済活動や情報のグローバル化により,各地域の人間活動は質的にも量的にも急激な変化が起こるようになってきました。また,グローバルスケールで見れば目立たない気候変動も,ある地域では大きな変化となって現れます。このようなグローバルな現象と結びついた各国・各地域での人間活動の変化は環境問題を引き起こし、その結果,たとえば大気中へ温室効果気体やエアロゾルを多量に排出させることになります。そして,大気中に排出された様々な物質は再びグローバルな気候変動や広域の環境問題引き起こすことになるのです。

 このような背景を踏まえて,本研究においては,特に最近約20年間の中国を中心としたアジア地域を対象に,

  1. グローバル化の影響による各国,各地域の経済,産業,社会の変化と大気中への人為起源物質の排出量,分布の変化の関係解明,
  2. 大気中に排出された人為起源物質のグローバルな気候変動並びに広域の大気環境汚染への影響の解明,

を目的として研究を実施します。従来の研究のように個々の大気中の物質の観測から変動の要因を探るのではなく,逆に人間活動を中心に考え,社会科学と自然科学の両面から総合的に解明するという方法で研究を進めます。

図1 本研究プロジェクトにおける地球環境問題の捉え方

研究内容

(工業部門の排出−石炭流通・品質と使用量の分析)

 工業部門等における石炭利用活動を通して温室効果気体やエアロゾルの排出を明らかにします。中国の主要な地域を選択し,近年の経済のグローバル化,市場化の中における全国的な石炭流通機構の変化,発電所等、様々なユーザーが利用する石炭の入手ルートなどに関するデータを系統的に収集・分析します。

(輸送部門の排出−自動車起因の排出推計)

 中国やその他のアジア諸国における自動車保有台数,燃料品質,使用燃料量,燃費,規制の実効性等のデータを収集,分析することによって,各地の自動車起因の排出を推定すると同時に,社会経済活動のグローバル化との関係を解明します。

(認識要因に関するデータ収集と分析)

 人間活動は様々な排出を促進するとともに,排出を抑えようという活動をも惹起します。そのメカニズムを解明するために,中国環境報その他の新聞等様々なメディアに載せられた情報を収集,分析するとともに,現地調査を行います。

(温室効果気体とエアロゾルの観測)

 中国や日本付近で,広域にわたる大気中の温室効果気体CO2, CH4, N2Oの濃度とそれらに含まれる炭素,酸素,窒素の同位体比の観測を行います。また,エアロゾルの濃度,粒径分布,化学組成,及び光学的特性を観測します。

(大気輸送モデルによる解析)

 物質循環を定量的に理解するための,領域型高分解能物質循環モデルを開発します。そして,このモデルを用いて,社会科学的分析から得られた温室効果気体やエアロゾルの排出量分布と中国および日本付近で観測された温室効果気体の濃度や同位体比,エアロゾルのデータとの比較解析を行います。

(総合解析)

 以上を総合し,温室効果気体とエアロゾルの分布と変動に及ぼすアジア地域における人間活動の影響のメカニズムを明らかにします。また,近年のいわゆる様々なグローバル化現象がアジア地域の社会・経済,産業ひいては大気中への様々な物質の排出にどのように影響を及ぼしたのかということを明らかにします。

図2 寒冷渦に取り込まれ大陸から流れ出す黄砂(黄色)と硫酸塩(ピンク)(九州大学・鵜野伊津志教授提供)

研究協力体制

図3 本研究プロジェクトにおける研究協力体制