「ABC-EAREX2005期間中における済州島、
福江島、奄美大島での大気エアロゾルの化学組成」

鶴田 治雄・中島映至(東大気候システム研究センター)、
須藤重人・米村正一郎(農業環境技術研究所)、
矢吹正教(極地研究所)・高村民雄(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、
菊地信行(宇宙航空研究開発機構、EORC)・青木一真(富山大学)、
片桐秀一郎・早坂忠裕(総合地球環境学研究所)

本プロジェクトでは、次の2つの研究テーマを実施している。
1.APEX総合観測期間中における奄美大島での大気エアロゾルの化学分析と光学測定から計算された各の単一散乱アルベド(SSA)の比較と問題点の検討
 APEXプロジェクト(1999-2004年)で実施された総合観測期間中に、奄美大島で採取した大気エアロゾル中の粒径別EC/OC、水溶性イオン、 微量元素を測定し、それから主要な化学組成を求め、単一散乱アルベド(SSAc)を計算した。一方、PSAPとネフェロメータによる光学測定からSSAo を求め、SSAcと比較した結果、SSAoのほうが約0.05-0.2だけ小さかった。化学分析用の大気エアロゾルは直接外気をフィルターに採取している が、光学測定では外気を採取管により室内の光学機器に導入しているので、配管によるロスや相対湿度によるSSAoの補正を行った結果、SSAcとの差が縮 まった。
2.ABC-EAREX2005期間中における済州島、福江島、奄美大島での大気エアロゾルの化学組成の特徴と地点間の比較
 2005年3月7-25日に、済州島(高山:GOSAN)、福江島、奄美大島で、4段階の粒径別に大気エアロゾルを採取し、EC/OC、水溶性イオン、 微量元素を測定した。ECとOC濃度の平均値は、済州島>福江島>奄美大島の順に大きかったが、OC/ECは、その逆で奄美大島>福江島>済州島の順に大 きかった。後方流跡線解析によれば、EC濃度はどの地点とも、中国東部沿岸域を通過した汚染大気中で最高だったが、OC濃度は、朝鮮半島あるいは中国北東 部を通過した気塊中で最高であった。この原因として、ECと異なる陸域でのOC排出量分布、海上を輸送する過程での変質過程、そして海上からの生物起源に よる排出などの可能性が考えられた。さらに詳細な解析を実施中である。