「ABC観測期間における雲・エアロソルの光学パラメータと放射効果」

高村民雄(1), 竹中栄晶(2), 齋藤寛樹(2), B. J. Sohn (3), 青木一真(4),杉本伸夫(5)
(1)千葉大学環境リモートセンシング研究センター (2) 千葉大学大学院自然科学研究科
(3) ソウル国立大学 (4) 富山大学 (5) 国立環境研究所


観測済州島で2005年3月に実施されたABC EAREX2005集中観測について,マイクロ波放射計と日射計のデータを併用することにより雲の光学パラメータ(光学的厚さ及び有効粒径)の推定を行っ た.これは,比較的水平均質が想定される水雲について,マイクロ波放射計から推定される雲水量が,近似的に有効粒径(Re)とその光学的厚さ(COD)で 記述されることから,同時に観測された日射量を満足させる最適解(Re, COD)を求めようとするものである.全天日射量を利用することから雲の水平均質性が必要であり,期間中の日射量,水蒸気量,雲水量の変動から解析可能と 思われる観測事例を9例選択した.
この9例についての解析の結果,各解析期間の平均で,Reは3umから13um程度にばらついており,CODも6〜90と幅広く変動した.ただし,COD は水平均質の仮定が必要なことから,解析上やや厚い雲のケースが多く必ずしも期間中の雲の平均的な厚さを示しているものではない.一方,これらをもとに地 表における雲の放射強制効果を評価すると,およそ96〜232W/m2程度であることが示された.単位の光学的厚さに対する雲の放射効果はその厚さのため に線形ではないが,極めて良い相関を示している.
一方,雲の発生・発達が周辺のエアロソル環境に依存している可能性を検討するためHYSPLITを用いた流跡線解析を行い,海上滞留時間と雲粒径の相関を みた.その結果雲粒径は気塊の海上滞留時間が長いほど大きい傾向があり,雲とエアロソル環境の何らかの関係を示唆しているものと思われる.