「東シナ海近辺上における雲粒核の特性観測とその役割」

石坂 隆(名古屋大学地球水循環研究センター)

 大気汚染物質が雲の微物理学的性質に及ぼす影響を究明する一環として、我々は東シナ海東部でAPEX航空機観測を実施した。そして、東シナ海上は他の多 くの海上と比べて、(1)大気エアロゾル数濃度が顕著に高い、(2)雲粒核数濃度も極めて高い、(3)これらの雲粒核は雲粒数濃度を増加させ、また雲粒の 光学的有効半径を減少させる可能性を見出した。これらの可能性が東シナ海近辺上でどのような規模で、またどのような頻度で起こるかを多くの資料を用いて調 べるため、奄美大島で雲粒核数濃度などの地上連続観測と同時に人工衛星MODIS資料による下層雲の微物理学的性質の解析(東海大学中島孝さん作成 ATSK3解析ソフト利用)を行い、それらの関係を調べている。奄美大島における観測はABC-Gosan Campaign(ABC-EAREX 2005)の一環として2005年3月7日〜4月4日の春季期間奄美大島北端の佐仁を中心として実施した。また、同上の観測を2005年10月15日から 12月20日までの予定で冬季期間を対象として実施している。上記春季の観測では、大気汚染物質の飛来により大気エアロゾルと雲粒核数濃度の急増が観測さ れた。また、黄砂が大気汚染物質と混在して飛来する時にも、大気エアロゾルと雲粒核数濃度の急増が観測された。大気エアロゾルと雲粒核数濃度が急増する時 間スケールは移動性高気圧などの影響もあって数時間〜1日間程度であった。一方、人工衛星MODIS資料による下層雲の微物理学的性質の解析によって、こ れらの雲粒核の急増が下層雲の微物理学的性質に大きな影響を及ぼす実態が見出されつつある。