本研究では、東アジアにおける地球温暖化関連物質と人間の社会経済活動の関係解明を主題とする。
 今まで、自然科学系の研究では、大気中の個々の種類の物質の循環過程の解明に主眼が置かれ、人間活動は、その要因の一部という捉え方が為されてきたが、 本研究では、逆に、地球の温暖化問題に大きな影響を及ぼしていると考えられる人間活動(ここでは、例えば中国における各種エネルギー利用の実態、あるいは 自動車の数、利用形態等)を具体的に選び、これらを視座の中心に置くことによって、温暖化問題と関係する大気中の物質への人間活動の影響を総合的に解明し ようというのが狙いである。
 人文社会科学系のこの分野の研究は、人間の社会経済活動からエネルギーの消費を通して大気中へ排出される物質を見積ることが中心であった。しかしなが ら、エアロゾルや反応性気体等の場合には、仮に排出量が正確に把握されたとしても大気中の濃度は風向、風速、気温、湿度等様々な条件で大きく異なるので、 排出量が分かったからといって大気中の物質の濃度分布が自明であると言うことにはならない。従って、図1に示すように、人間活動に伴って大気中へ排出され る様々な物質の濃度分布とその変動は、総合的に捉えることが重要である。